ストーリー

会社経営の夫と5歳になる息子と何不自由なく幸せに暮らしている中年主婦の朝子。
彼女は幼少の頃に受けた耐えがたい現実から逃れるように、自ら失聴という世界に
入り込んだままであった。そんな生い立ちを忘れかけようとしていたある日、自宅に
宛名不明の怪しい一通の封筒が届く。恐る恐る開封すると、中から信頼していたはず
夫の痴態写真が紛れ込んでいた。その途端に朝子の過去の様々なトラウマが目を覚ま
し、果たしてどこまでが現実で、何処までが妄想の世界なのか判別できないエロエロ
パラレルワールドに突入するのだった。


解説

自殺を題材に扱っている本編『朝子』の主人公·朝子は何一つ報われないまま自ら
の命を絶ち映画は終わります。ただそれだけの映画で、自殺という行為自体を肯定に
描いているように捉えられがちですが、人間の危うさ、弱さを切実に訴えているので
す。映画のメッセージそしてその描き方、及びキャラクターも単一に囚われないよう
に留意し、人間という様々な側面を兼ね備えた複雑な動物として描いています。

 





    CAST

村井美波子(朝子)
宮沢仙吉(朝子の旦那)
萩野祥子(朝斯の母)
亀元悠斗(朝子の息子) 
青柳すず(子役) 
武田彪(子役)
稲葉浩美(中学生の朝子)
北田直俊(朝子の父)
服部富美子(喪服の女)
稲田志野(朝子の妹)
ホリケン。(電車の男)
小関敦子(その彼女)
田口朋毅(旦那のホモ相手)
小澤発情(朝子の浮気相手)
天才ナカムラスペシャル(AV監督)
ハードボイルド工藤(宅配便)
桑原周平(ポスティングマン)
横山祐一(自殺した彼氏)
井手泉(精神科医)


宮原奈緒美 西嶋一徳 松田一郎
若松富美子 井上貴弘 石倉淳
羽鳥竜生  池田徹  亀元明美
小川愛未  河原玲  大塚旭
大島和夫  館野完  アサ風リーア
ピスケン  阿部謙太 汀野大河

友情出演  (る·しろう)
      金澤美也子
      井筒好治
      菅沼道昭


シベリア文太(オカマ)
清水しげお(理事長)
大木裕之(謎の男)


 

 

    STAFF

企画     吉田陽子
原案·脚本  四十九番
       北田直俊
撮影·編集  小澤発情
       北田直俊
作品協力   佐藤英里子
監督補佐   田口朋毅
       羽鳥竜生
       四十九番
       小澤発情
音楽     金澤美也子
挿入曲    る·しろう
衣装     大波愛子
機材     天野奈津子
       照沼寿セヨ
福島ロケ   井上貴弘
       星野節子
       横山祐一
仕上げ    デジタルムービー工作室
       山本希平

協力      大蔵寺(津久井湖)
        蒲田保育園
        池田学園     
        コアマガジン·バースト
        ツチノコレーベル 
         (有)シネマンブレイン
        ナイロビ     
         (株)諏訪サービス社
         根元書房   
        蝸牛プロダクション
         土木·吉田組  
         明治マート(椎名町店)

 

監督     北田直俊
   
   
   
   
   
   
   
   
 
 

 

 一般試写会の感想

      
 ユニークな部分とドロリとした部分とのある意味混乱の中、
作品を視続けていくことで、「こういう映画があってもいい!」
と面白く感じました。オリジナルティがすごくある。
                   
                   (20代·女性会社員)

 

 良く出来ている! おどろいた!
人がこわれていく様、こわされてゆく様…。
人間誰もが抱えている悲しみ。それは火がついていないと
ただのかたまりである爆弾のような。そういう深いところにある
人の悲しみを知っていないと出来ない作品だと思う。
難しくて言葉で説明しがちになりそうなところもきちんと
心の描写ができていて、わざとらしくない。
(略)
それにしても、こんなに嘘がなくしっかりひとの心が描けていてる
作品はすごいと思う!
  
                   (30代·女性経営者)

 

 アートは人生の悲痛や、逆にどんな人にでも一度はあるだろう
人生がキラっと 光った瞬間を見せてくれる素晴らしいものだと
思います。それを他人の物まねでなく 自分の力で表現しよう
としている作品は、そうそうないと思います。

                    (30代·主婦)

 

 クサい嘘で並べたハッピー物語より、絶望を絶望として
ちゃんと描いたほうが、よっぽど尊いと感じました。

                    (40代·男性自営業)

 

 日本アカデミーの表彰観ていたら、茶番に感じて。商業ベースの
映画が 悪い訳ではありませんが、年50本以上観ていて、今年NO1は
私の中では『朝子』です。

                    (40代·男性) 

 

 

                 

 
 
 
 
 
     
     

コメント

暑くて長いあの夏の映画という記憶

  北田さんは、映画の神様に愛されている映画監督だと思う。
私のイメージの中の北田監督はいつも荒野で一人、吹きすさぶ向かい
風の中歩いている。でもその荒野を包む女神の、北田さんを見る目は
いつもやさしく、慈愛にみちている。

 今思い返してみても、『朝子』の撮影は何かの熱に浮かされている
ような日々だった。クランクインが5月、クランクアップが10月
だったと思うが、私にとっては暑く長い夏の記憶のように感じる。
 
数年ぶりに会った監督は、生涯を誓った女性の死という越え難い
苦しみの渦中にあった。目黒の駅ビルののどかなカフェで、似つかわ
しくない内容の会話で向かい合いながら、北田監督は私に新作の構想を
語り「また映画を撮れるようになるかはわからんけど、いつか撮れる
ようになったら」と言った。それに対して「いつかじゃなくて、今
撮りましょう。そのままの北田さんが撮るしかないでしょう。」と
言ったのは、私であって私でない。
何かに押されるようにして出た言葉だった。
 
撮影中もよく何かに守られているような気がしたものだった。
監督はストイックで、現場はいつも真剣だった。助監督兼役者だった
小澤発情君は、全裸で野外撮影中、降り出した雨に、カットがかかった
瞬間迷うことなく監督に走り寄り、自分の局部ではなくカメラを守った。
スタッフだけではなく、監督が役者たちの熱に、予定外の長回しや、
シーン増を余儀なくされることも多々あった。誰もが真摯で、
本当に余計なもののない現場だった。
 
撮影は概ね天候に恵まれ、演出上効果的なタイミングでいつも雨は降った。
クライマックスの倉庫街の凌辱シーンでは、これ以上ないというタイミングで
大粒の雨が降り出し、役者の一人が「あーめーふってきたぁ!」と叫ぶと
同時にみんなのテンションが狂気に舞った。
朝子にとって残酷で過酷なシーンにも関わらず、私はその光景を美しいと
すら感じた記憶がある。

張り詰めた緊張感のなか、土砂降りの雨に打たれカメラを回す監督と
スタッフのもと出番を終えたエキストラの役者たちもが、誰も傘をささなかった。
『朝子』は映画の神様に愛されていた。

                 2012/8/31 『朝子』主演·村井美波子

 
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